R3年 9月の言葉 

 コロナ禍という逆境の中で、世論の懸念、感染症対策、誰もいない観客席であったが、世界の選手達の歓喜と涙の残像を残して、無事五輪の聖火が消えた。

 この大変な苦難を乗り越えての選手達であったが、ライバルに再会し、競技ができる喜びと、五輪という約束を貫いた日本への信頼と敬意を、選手達も多くの海外関係者も感謝の言葉を口にした。

 2024年パリ大会組織委のエスタンケ会長も「これほどの努力を払った開催都市を他には知らない。金メダルに値する」との、言葉を残した。
その中で、選手達が発した言葉で、最も印象深かったのは、柔道男子73キロ級大野将平選手の言葉であった。

 「オリンピックは楽しむ場ではない。自分にとって戦いの場であり、生きるか死ぬかの戦場である。結果が全てだと思っている」。金メダルが決まってからも相手を称えた。試合で負けた選手はそれだけで悔しい。その相手に自分の喜びをみせたり、それ以上の心理的なダメージを与えない。

 畳の上では感情を表す事はなかった。じっと日本武道館の天井を見上げていた。リオに続いて今回の金メダルに全ての国の人が立って拍手を送った。
生きるか死ぬかの1日の戦いを終えた大野将平選手には王者の風格があった。
「箱根山 駕籠に乗る人 担ぐ人 そのまた草鞋を作る人」で、それぞれの人々が力と知恵を出し合った。57年ぶり2度目の東京五輪。大型スクリーンに「ARIGATO」の文字が映し出され閉幕した。
        感激・感動なき人生は無意味である。

                                     館長

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